インターネットや週刊誌などで、亡くなった著名人についての私生活や過去の出来事が取り上げられることがあります。
そのような記事を見て、
「亡くなった人の名誉を傷つけるのは違法ではないの?」
「死者にも人格権はあるの?」
と疑問に思う方も多いと思います。
今回は、この問題を弁護士の視点から分かりやすく解説します。
1 人格権とは何か
まず「人格権」とは何でしょうか。
人格権とは、簡単に言うと
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名誉を守る権利(名誉権)
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私生活を守る権利(プライバシー権)
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肖像を勝手に使われない権利(肖像権)
など、人の人格そのものに関わる権利の総称です。
これらは、財産とは違い、その人自身に密接に結びつく権利です。
2 日本の法律では「人格権は死亡で消滅」が原則
日本の法律では、一般に人格権はその人が死亡すると消滅すると考えられています。
つまり法律上は
「死者自身の人格権」そのものは認められていません。
したがって
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死者のプライバシー侵害
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死者の人格権侵害
という形で、亡くなった本人の権利として損害賠償請求をすることは、原則としてできません。
3 ただし「死者の名誉毀損」は成立することがある
ここで重要なのが、
死者の人格権はないが、死者の名誉毀損は成立し得るという点です。
刑法には次の規定があります。
刑法230条2項
死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示した場合に限り処罰される。
つまり
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亡くなった人について
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嘘の事実を広めて
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名誉を傷つけた場合
には犯罪になる可能性があります。
4 遺族の人格権侵害が認められる場合もある
また、裁判では
遺族の人格権侵害
として責任が認められる場合があります。
例えば
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故人の人格を著しく侮辱する表現
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遺族の社会的評価を傷つける内容
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故人を侮辱することで遺族の感情を著しく侵害する場合
などです。
つまり法律の構造としては
↓
遺族の人格権 → 侵害があれば保護
という形になります。
5 有名な裁判例
この問題に関係する裁判として、
1964年東京オリンピックのマラソン銅メダリスト円谷幸雄に関する記事を掲載した出版社宝島社を相手に遺族が起こした裁判があります。
遺族は
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名誉毀損
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プライバシー侵害
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人格権侵害
などを主張しましたが、裁判所は
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死者自身の人格権侵害は認められない
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遺族の人格権侵害も認められない
として請求を認めませんでした。
この事件は、
「死者の人格権」の問題を考える上で引用される例
になるものと思われます。
6 なぜ死者に人格権は認められないのか
死者に人格権が認められない理由は主に次の2つです。
① 人格権は本人固有の権利だから
人格権は「人格そのものに結びつく権利」であるため、その人が亡くなると主体が存在しなくなると考えられています。
② 表現の自由との関係
もし死者の人格権を広く認めると
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歴史研究
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評論
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ジャーナリズム
などが大きく制約されてしまう可能性があります。
そのため、日本では
死者本人の権利としては認めない
という整理になっています。
7 SNS時代に増えているトラブル
最近はSNSで
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故人の過去を暴く投稿
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有名人の死亡後のゴシップ
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デマの拡散
などが問題になることも増えています。
このような場合でも
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虚偽の事実
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遺族の名誉侵害
があれば
名誉毀損や不法行為として責任が生じる可能性があります。
まとめ
今回のポイントを整理すると次の通りです。
① 日本では死者自身の人格権は原則認められていない
② ただし死者の名誉毀損は成立することがある
③ 遺族の人格権侵害として責任が認められる場合もある
亡くなった方についての情報発信でも、法律上まったく自由というわけではありません。
SNS時代だからこそ、故人や遺族への配慮がますます重要になっていると言えるでしょう。




