令和6年(2024年)5月に成立した「民法等の一部を改正する法律」により、
日本でも離婚後に父母がともに親権を持つ「共同親権制度」が導入されます。
そして、政府は2025年10月31日の閣議で、施行日を令和8年(2026年)4月1日とすることを正式に決定しました。
これにより、日本の親権制度は明治以来続いてきた「離婚後は単独親権」という原則から、
およそ120年ぶりに大きく転換することになります。
◎ 何が変わる? 共同親権の基本ポイント
これまで日本では、離婚後の子どもの親権は、父母どちらか一方しか持てない単独親権でした。
しかし改正後は、以下のような選択が可能になります。
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父母が協議のうえ、共同親権または単独親権のいずれかを選べる
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協議がまとまらない場合は、家庭裁判所が判断する
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子どもの虐待やDVなど、子の福祉に重大な懸念がある場合は単独親権が原則
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親権の内容(監護、財産管理、進学・医療などの意思決定)は、父母が協議して行うことが基本
つまり、「父母が協力し合える関係であれば共同親権も選べる」仕組みになります。
◎ 適用時期と対象
新制度は令和8年(2026年)4月1日以降に成立する離婚から適用される予定です。
それ以前に離婚した場合は、原則として従来の単独親権制度が適用されます。
ただし、施行後に「共同親権へ変更したい」という希望がある場合、
一定の手続を経て家庭裁判所で判断を求めることが可能になる見込みです。
◎ 実務での留意点
山口統平法律事務所が扱う「離婚」「親権」案件の現場でも、
この改正は非常に大きなインパクトをもたらします。
ただし、制度上「共同」といっても、実際に機能させるには
父母間の信頼関係・協議体制・意思疎通が不可欠です。
特に次のようなケースでは注意が必要です。
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夫婦間の対立が深刻で、子どもの進学や居所をめぐって争いがある
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一方が精神的・身体的DVを行っている
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子を使った嫌がらせや、親権争いのための接触妨害がある
このような状況では、共同親権を選択してもかえって子の利益を害するおそれがあり、
家庭裁判所が単独親権を指定する可能性が高いと考えられます。
◎ 今後の見通し
法務省や家庭裁判所では、施行に向けて
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裁判所職員・調査官の増員・研修
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協議支援の仕組みづくり
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子どもの意見を反映する制度設計
などが進められています。
実際の運用はまだ固まっていませんが、
2025年中には家庭裁判所の実務指針やガイドラインが公表される見込みです。
◎ 弁護士からのアドバイス
今回の法改正は、親に「選択肢」を与える一方で、
父母双方により高い責任を求める制度でもあります。
離婚や別居を考えている方は、
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相手との協議が現実的に可能か
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子どもの意思をどう尊重するか
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今後の監護・養育費・面会交流をどう設計するか
を、早めに専門家と一緒に整理しておくことが重要です。
山口統平法律事務所では、
親権・監護・面会交流など、子どもに関する法的サポートを行っています。
改正後の親権制度についてのご相談も随時受け付けています。
お気軽にご相談ください。



