不動産の押し売りならぬ押し買いにも要注意

 

1.「押し買い」とは?

 近年、社会問題となっているのが 高齢者を狙った不動産の強引な買い取り(いわゆる「押し買い」) です。
典型的な手口は、突然訪問して「今すぐ売らないと損をする」「修繕費が高額にかかる」「子どもに迷惑がかかる」などと不安をあおり、その場で不当に安い価格で契約を結ばせる、というものです。

高齢者は判断力が衰えている場合や、家族と相談する機会を奪われることもあり、大切な財産を失う深刻な被害が後を絶ちません。

 

2.法律的な問題点

このような「押し買い」には、法律上いくつかの争点が考えられます。

  • 民法上の取消・無効
    ・相手の脅迫や詐欺的言動があれば、契約は取り消すことが可能です。
    ・著しく不公正な条件の場合、公序良俗違反として無効が主張できることもあります。

  • 消費者契約法の適用
    高齢者は「消費者」にあたり、重要な事実を告げなかったり、断定的判断を告げて誤認させた場合には契約を取り消せます。

  • 宅建業法違反の可能性
    不動産業者であれば、宅地建物取引業法の規制を受けます。誇大広告や不当勧誘は禁止されており、違反すれば行政処分や刑事罰の対象になり得ます。

 

3.日弁連の動き

日本弁護士連合会(日弁連)は、こうした被害を防ぐために 法改正を含めた高齢者保護の強化 を提言しています。
「高齢者の財産を狙った悪質な買い取り行為から守る仕組みを作るべきだ」という方向性が示されており、今後の制度改革にも注目が集まっています。

 

4.被害に遭わないためにできること

  • その場で契約しない
    どんなに急かされても、即決は避けましょう。

  • 家族や信頼できる第三者に相談する
    一人で抱え込まず、必ず第三者に意見を聞いてください。

  • 「怪しい」と思ったら記録を残す
    名刺、パンフレット、会話の録音などは後の証拠になります。

  • 専門家に早めに相談する
    弁護士に相談することで、契約取消の可能性や損害回復の手段を検討できます。

 

5.まとめ

 高齢者を狙った「不動産の押し買い」は、法的に争える余地が大きい悪質な行為です。
しかし、一度契約してしまうと取り戻すには時間も労力もかかります。 「おかしい」と思った時点で、すぐに専門家へ相談することが最大の防御策 です。

 

当事務所では、不動産トラブルや高齢者をめぐる法律問題についての相談を受け付けています。お気軽にご相談ください。