最近ニュースでも取り上げられているように、愛知県豊明市では「スマートフォン等の適正使用の推進に関する条例案」が市議会に提出されました。もし可決されれば、2025年10月1日から施行される予定です。
スマートフォンの利用時間を「1日2時間以内」とする目安を定めた条例は全国的にも注目を集めています。今回は、この条例案のポイントや法的な位置付けについて、弁護士の視点から解説します。
条例案の内容
豊明市の条例案では、次のような点が盛り込まれています。
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余暇時間におけるスマホ利用は1日2時間以内を目安とする(学習・仕事・通勤に必要な時間は除外)。
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夜間利用の制限目安
小学生は21時以降、中学生以上と大人は22時以降の使用を控えるよう促す。 -
文言は「努める」「促す」といった努力義務的表現であり、強制力はない。
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違反しても罰則はなし。
つまり、この条例は市民の行動を規制するものではなく、「スマホの適正利用を心がけましょう」という呼びかけ型の条例です。
法律的な観点
弁護士の立場から見ると、この条例案にはいくつかの重要な特徴があります。
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強制力・罰則はない
法律上の「義務」ではなく、市民への「お願い」に近い性格を持っています。したがって、違反しても法的責任を問われることはありません。 -
憲法との関係
憲法13条は「個人の尊重・幸福追求権」を保障しており、個人の生活スタイルに行政がどこまで介入できるのかは微妙な問題です。罰則がない点は、この憲法上の権利とのバランスを取ったものと考えられます。 -
実効性の課題
条例自体が努力義務にとどまるため、実際に市民の生活習慣がどこまで変わるかは未知数です。むしろ、家庭や学校、地域での「対話のきっかけ」として活用される可能性が高いでしょう。
社会的な意義
スマートフォン依存や長時間利用が、視力低下や睡眠不足、家族関係の希薄化などに影響を及ぼすという指摘がされています。
今回の条例案は、市が「スマホとどう向き合うか」を市民に考えてもらうための一つのアプローチといえます。
実際の効果よりも「問題提起」としての意味合いが強い点で、注目に値する取り組みです。