【弁護士解説】注目の「二地域居住制度」―新しい暮らし方と法的リスクとは?


今日は、最近じわじわと注目を集めている「二地域居住制度」について、法律の視点から解説します。

 

 

◆ 二地域居住ってなに?

 

「平日は都会で働き、週末は地方で暮らす」
「普段は地方でリモート勤務、必要な時だけ都市へ」
こうした“二拠点生活”を支援するのが、いわゆる「二地域居住制度」です。

2024年末に改正された《広域的地域活性化基盤整備法》では、国と自治体が連携して、地方の空き家活用や移住促進を強化。補助金や地域交流支援も進められています。

 

◆ 法的な注意点①「住所」と「住民票」はどうする?

 

二地域居住でよくある相談の一つが、「住民票はどこに置くべきか?」という問題です。

住民基本台帳法では、「生活の本拠」がある場所に住民票を登録することが義務づけられています。
つまり、寝泊まりの頻度や生活実態に応じて、都市部なのか地方なのかを判断しなければなりません。

これを誤ると、

  • 税務署から「納税地が不適切」と指摘されたり

  • 自治体サービス(保育園・ごみ収集・医療費助成など)が利用できなくなるリスクがあります。

 

◆ 法的な注意点② 二拠点の「物件契約」管理に注意!

 

たとえば、地方の古民家を賃借して「DIYで住みながら直す」というケース。
この場合、通常の賃貸借契約では改修に制限があるため、原状回復や損害賠償を巡ってトラブルになることも。

そのため、

  • 契約書に「改修の許可」「費用負担」「撤去義務」などを明記する

  • 住宅設備の瑕疵がある場合は、契約前に免責範囲を確認する

  • 空き家バンクなどの自治体支援制度と契約内容を整合させる 

などの対策が必要です。

 

◆ 法的な注意点③ テレワーク・副業との関係

 

会社員が地方で働く場合、就業規則が都市部の出勤前提になっていることが多いです。

✔ 自宅での労災は適用されるのか?
✔ 会社の所在地と住民税課税地がズレた場合、どうなるか?
✔ 副業で地域プロジェクトに関わる場合の契約形態は?

これらを放置していると、会社側も労働者側も思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

 

◆ 地域コミュニティとの“見えない”法的摩擦

 都市生活者が、地域の「慣習」「暗黙のルール」とぶつかることは少なくありません。

 

例:

  • 公共施設の利用予約に「地元優先」の慣習がある

  • 共有私道や井戸などで使用権をめぐる対立が発生

この場合、利用ルールを事前に文書化する、町内会との契約を締結するなど、法的な備えで摩擦を最小限に抑えることが可能です。

 

◆ まとめ:制度の拡充とともに「契約」「法的整理」がカギに

 

二地域居住は、豊かな暮らしの選択肢を広げる一方で、法律とのすれ違いが起きやすい制度でもあります。

  • 住所や納税地の確認

  • 賃貸契約の見直し

  • テレワークや副業の整合性

  • 地域との合意形成

こうした問題に直面したとき、弁護士は「安心して移住・定住できる生活基盤づくり」の伴走者となれる存在です。

 

 

山口統平法律事務所では、移住・二地域居住・空き家活用・地域トラブルに関するご相談も承っております。
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