カスハラ対策が企業の義務に〜具体的に何をすれば良いの?

 

 2025年6月4日に成立した【改正労働施策総合推進法】により、企業は「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策を講じる義務を負うことになりました。

 これは、従業員のメンタルヘルスや職場環境を守るための大きな一歩です。
 本記事では、企業が「何を」「どこまで」やる必要があるのかを、実務に即して解説します。

 

◆ カスハラとは?定義の再確認

 法改正で明確にされたカスハラの定義は、以下の通りです。

 

「顧客や取引先などによる、社会通念上許容される範囲を超えた言動により、労働者の就業環境が害されること」

 

たとえば:

  • 「土下座しろ」と怒鳴られる

  • 業務時間外に個人携帯へ執拗に連絡が来る

  • 理不尽なクレームで長時間拘束される

こうした行為が該当します。

 

 

◆ 企業が講じるべき5つの具体的対策

 

① カスハラ防止方針の策定と社内周周知

 

・企業として「カスハラを許容しない」明確な姿勢を文章化しましょう。

・社内の就業規則やハンドブックに明記することが望ましいです。

・ポスターやイントラネットで周知し、「組織として守る」姿勢を従業員に伝えましょう。

 

例:「当社は顧客からの不当な要求に対しても毅然と対応します。従業員の安全と尊厳を最優先にします。」

 

 

② 相談窓口の設置と対応フローの整備

 

・社内に【相談窓口】を明確に設けます(人事部・法務部・外部相談窓口でも可)。

・「誰が・どのように対応するか」のフローを事前にマニュアル化。

・相談した社員のプライバシーを保護し、報復的な扱いがないよう制度化します。

 

※社内の相談ルートが分かりづらいと、泣き寝入りが増えます。

 

 

③ 初動対応のルール化

 

・現場責任者や店舗マネージャーに対し、カスハラ発生時の初期対応マニュアルを配布。

 

例えば:

  冷静な対応(録音・記録をとる)

  長時間拘束されている場合の切り上げ判断

  緊急時は警察へ通報する方針の明示

 

※「対応の基準」がなければ、現場で萎縮や放置が起こります。

 

 

④ 被害者へのケアと報告ルートの整備

 

・メンタル面のフォロー(産業医・EAP相談・有休取得の促進など)

・再発防止策の検討と職場内へのフィードバック

・必要があれば加害者(顧客)に対して「出禁」「契約解除」などの対応も

 

※顧客は「神様」ではありません。従業員の人権を最優先に。

 

 

⑤ 社内研修の実施

 

・「どこからがカスハラか」を判断できるように、全社員への教育を行います。

・現場職員・管理職向けに分けて研修を実施すると効果的です。

・クレーム対応とカスハラ対応は別物であることを明確に。

 

※研修は「職場を守る武器」。意識と判断力を高めましょう。

 

 

◆ 山口統平法律事務所ができること

 当事務所では、以下のようなサポートを提供しています:

  • カスハラ防止方針の策定支援

  • 相談窓口体制の構築サポート

  • 社内研修の実施(管理職・現場向け)

  • トラブル発生時の初動対応アドバイス

  • 対応マニュアル・社内規定の整備

中小企業・医療機関・小売業など、業種に応じた実践的なアドバイスをいたします。

 

 

【最後に】“顧客第一”と“従業員保護”は両立できる

 「お客様は神様」という時代は終わりを迎えつつあります。
 今求められているのは、「誠実な顧客対応」と「健全な職場環境」の両立です。

 従業員が安心して働ける環境があってこそ、企業の持続的な成長があります。

 改正法の施行は2026年を予定していますが、準備は今からでも遅くありません。
 まずは社内の現状確認から始めてみてはいかがでしょうか。

 

 


名古屋の弁護士 山口統平法律事務所