職業選択の自由が勝利

 

認知症や病気などにより,判断能力が不十分であると家庭裁判所で審判を受けた人のことを被保佐人と言います。

 

平成19年12月14日までは,警備業法3条により,被保佐人は警備員になることはできないと定められていました。

 

 

平成17年2月,警備員として3年間勤務していた男性が,被保佐人になったため,警備業法3条により警備員をできなくなるという出来事がありました。

 

男性は,被保佐人とはいえ警備員の仕事をこなす能力はあったため,被保佐人を一律警備員の職に就けなくする警備員法の規定が憲法22条1項の職業選択の自由を不当に侵害するものであるとして,この法律を定めている国を相手取り100万円の損害賠償請求しました。

 

令和3年10月1日,岐阜地方裁判所は,被補佐人を一律警備員に就けなくする規定が職業選択の自由を保障した憲法に違反するなどとして,警備員を退職せざるを得なくなった男性の主張を一部認容し,国が男性に10万円の支払いをするよう命じる判決を下しました。

 

ちなみに,この裁判が起こされたことにより,警備業法は改正されており,平成19年12月14日以降は被保佐人を警備員の欠格事由とする規定は改正されました。

 

日本国憲法第22条は,「何人も,公共の福祉に反しない限り,居住,移転,職業選択の自由を有する」と定めております。

 

したがって,原則として誰でも職業を自由に選ぶことができます。他方,国や地方公共団体は,公共の福祉(≒社会全体の利益)のために職業選択の自由を制約することができます。

 

例えば,医者や弁護士などの仕事をする場合は,国の定める要件を満たさなければなりません。

 

こういった制約は,社会全体の利益である公共の福祉のための合理的な制約だと考えられています。

 

職業選択の自由の制約は,合理的な場合は憲法に違反するものではありません。

 

しかしながら,行き過ぎた制約は憲法違反になり,今回のケースのように損害賠償(国家賠償)請求が認められることもあります。

 

 

 

 

 

名古屋の弁護士
名古屋の弁護士