執行猶予が付けられないのに執行猶予を付けて釈放

 

 

 

刑法に触れる行為をすると刑務所に入れられるおそれがあります。
他方,刑の執行猶予という制度が日本にはあります。
執行猶予とは,
判決で有罪判決を下されても,
酌むべき事情(情状酌量の余地)があれば,
一定の期間(執行猶予期間)何も問題を起こすことなく暮らすことにより
刑に服さなくて良くなる制度です。

 

 

 

 

刑法 第二十五条 第1項 

次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。

 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
この条文に記載されている通り,
  禁固もしくは懲役の刑に処せられた人は,その刑の執行を終わった日又はその刑の執行の免除を得た日から5年以内は執行猶予が付されることはありません。
福岡地裁久留米支部で,
令和3年6月17日
過去5年以内に禁固以上の刑で服役していた人に対し,
刑法25条第1項に反し,
執行猶予を付きの判決が言い渡されました。
法廷で検事が誤りを指摘したにも関わらず,その裁判は終了(閉廷)しました。
執行猶予付きの判決のため,勾留されていた被告人も釈放されました。
執行猶予の要件を満たさないことを看過した珍しい判決です。
人間誰しも間違えることはあります。
そのため,日本の裁判は三審制を取っています。
この裁判も,おそらく福岡地検が控訴することになると思われます。